ランドクルーザー・プラドあらゆる道を走破するトヨタの大人気車
ランドクルーザーは国内メーカーのクルマとして最も長い歴史を持ちます。170を超える国や地域に輸出されるワールドカーで、世界で最も知名度の高い4WDの1つです。プラドの前身は1985年にデビューした、ランドクルーザー70ワゴンです。
その後、1990年のモデルチェンジでプラドというサブネームがつき、現在に至っています。以来プラドは進化を続け、高度な駆動システムを持つ本格4WDとして、独自のポジションを確立しました。
あらゆる道を走りぬくために作られたクルマ。それがランドクルーザーであり、プラドです。
70ワゴンからプラドへ
70ワゴン登場の背景には、1982年にデビューした三菱パジェロの存在があります。ヘビーデューティー仕様の70バンに、小型化されたエンジンや乗り心地重視のサスペンションを与え、パジェロのライバルとして世に出ました。しかし、バン(商業車)のイメージを引きずった70ワゴンは、トヨタの期待ほど販売実績を伸ばせないまま、1990年にモデルチェンジされ、ランドクルーザー・プラドとなりました。
70ワゴンは2ドアのショートボディみでしたが、プラドでは4ドアのロングボディも登場します。70ワゴン同様、直線基調のハコ型デザインですが、フェンダーやボンネットフードに丸みを持たせ、ハコっぽいイメージを若干薄めています。内装も、「走る仕事場」的なものから、乗用車のテイストを盛り込んだものになりました。この時期、他メーカーからも同様のクルマが販売され、4WD車がちょっとしたブームとなります。
プラドは、卓越した悪路走破性能をアピールするため、様々なイベント会場等で試乗会を行いました。用意されたゲレンデのような坂道を走る機会など、実際にはほとんどないでしょう。しかし多くの人が「未知なるクルマの世界」を体験したことは事実です。アウトドアレジャーの人気も手伝って、プラドは多くのファンを獲得してゆきます。
その後も進化を続けたプラドは、90系、120系、150系へとモデルチェンジされ、現在に至ります。
強固なシャシーと多彩な走行モード
プラドは2009年にモデルチェンジで、4代目(150系)となりました。デザインを担当したのは、3代目(120系)同様、トヨタヨーロッパスタジオです。150系は全車4ドアのロングボディーとなり、2ドアのショートボディーはなくなりました。
プラットフォームは120系からのキャリーオーバーですが、サスペンションの見直しを行い、オンロードでの快適性をより重視しています。その一方、様々なデバイスとホイールコントロールによる、悪路走破性能はさらに進化しています。
プラドが本格4WDと呼ばれる最大の理由は、シャシーにあります。現在人気のセダンベースのSUVはフレームを持たないモノコックシャシーですが、プラドのシャーは強固なラダー(はしご)フレームにフロアパネルを重ねたものです。悪路での激しいホイールストロークをしっかり受け止める為には、この頑丈なシャシーが必須となります。
当然、車重が増えますし、フロアが厚くなるため乗降性も犠牲になりますが、このシャシーこそが「真の4WD」の証であり、けた違いの耐久性を実現しているのです。
2013年の1部改良では、ヘッドライトが「つり目」となり、フロントマスクの印象が大きく変わりました。走りの機能もバージョンアップされました。悪路での走行をコントロールする「マルチテレインセレクト」のモード数が4から5へと増え、より細かな設定が可能となりました。
・LOSE ROCK ~ 土と石が混じった滑りやすい路面
・MOGUL ~ 凹凸の激しい路面
・ROCK&DIRT ~ 段差の多い路面
・ROCK ~ 岩石の多い路面
5つのモードを切り替えることで、各ホイールの駆動力やブレーキ圧が適切にコントロールされ、路面に合った最適な走行性能が得られます。モード切替ダイヤルはインパネ中央に設置され、操作も容易です。
実際に5つのモードを素早く切り替え、そのポテンシャルを最大限に使いこなす、などという機会はそう多くはないかも知れません。走行中、突然ラフロードに遭遇しても、どのモードを選べばいいのか、即座に判断するには慣れと経験を要しますが、「4WDを操る」という魅力に触れるのも、そのような場面でしょう。
マルチテレインセレクト以外にも、日常運転で使えるアクティブな機能も抜かりはありません。
空転したホイールにブレーキをかけ、トラクションのかかったホイールにトルクを集中します。
・クロールコントロール(TZ-Gに標準装備)
低速での悪路走行時、アクセルとブレーキをクルマが自動で制御する機能で、ドライバーはハンドル操作に集中できます。
・マルチインフォメーションディスプレイ
4輪のトラクションとデフロックの状態を、ディスプレイに表示します。
・ダウンヒルアシストコントロール(ディーゼル車に標準装備)
降坂時、車速を一定の速度にキープします。
・傾斜角モニター
クルマの前後左右の傾きをディスプレイに表示します。
・タイヤ切れ角表示機能
前輪の切れ角を7段階(中立及び左右3段階)で表示します。
8年振りに復活したディーゼルエンジン
エンジンは2.8ℓのディーゼルターボと、2.7ℓのガソリンです。2015年に復活したディーゼルは、コモンレールとトヨタ初の尿素SCRシステムを採用した、新時代のクリーンディーゼルです。このエンジンの登場によって、4.0ℓガソリンはラインナップから外れました。
最大出力の177psは2.7ℓガソリンと同等ですが、最大トルクは45.9kgf・mと、4.0ℓガソリンをも上回ります。この太いトルクは悪路での走行を容易にし、2トンを超えるプラドを軽々と加速させます。まさにランクルファン待望のディーゼル復活となりました。
トランスミッションは全車6ATで、MTの設定はありません。「ヨンクはマニュアルで乗りたい」と言う、ユーザーも多いのですが、マルチテレインセレクトのような高度なホイールコントロールには、ATがより適しています。
悪路での走破性を左右する対地障害角は、アプローチアングルが32°、デパーチャーアングルが28°(TZ-Gは27°)、ランプオーバーアングルが22°と、本格4WDとして十分余裕を持たせてあります。
グレード
グレード構成はシンプルです。基本性能を押さえたベースグレードのTX
本革シートを装備したTX-L
リアにエアサスペンションを持つ最上級のTZ-Gとなります。
TZ-Gはディーゼル専用グレードですが、他はガソリンも選べます。乗車定員は2列シートの5名と、3列シートの7名があります。ただしTZ-Gは7名のみとなります。
孤高の存在ランドクルーザー・プラド
プラドの「立ち位置」を、セダンベースのSUVと同列に語ることはできません。あらゆる道を走り切り、そして帰ってくるための「道具としてのクルマ」が本来の姿です。現代のクルマですから、エアコンもパワーウィンドウも備わりますが、4WDとしての走破性と高い耐久性は筋金入で、「格の違い」を感じさせます。
プラドは事実上ライバルの存在しない孤高の存在と言えるでしょう。半世紀以上に渡って本格4WDを作り続けているトヨタの技術と経験が集約されています。ランドクルーザー・プラドは、現在少数派となりつつある「男のクルマ」そのものと言えるでしょう。